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注釈 #2

21世紀に入ってインターネットが普及し、誰でもが情報を公開し、情報を利用できるようになった。

本論文作成時点からすでに20年近く経ち、社会構造が大きく変化し様々な考え方や価値観が大きく変化した。私自身も、本論文作成時点では考えもしなかったような人生を歩み、本論文に対して付け加えたい内容がいくつもできている状態である。

しかしながら、アーカイブ化の意義が大きくなった現代だからこそ、本論文について元のままの文章を改変せずに、注釈という形で情報の付け加えをすることの意義は大きいように思う。

本論文を書いた時点でも薄々気づいていた問題がある。それは、どのような宗教や世界観も、成立した当初の思想が、成立した時代とは異なる価値観を持つ後世の人々によって変質させられ、その存在意義を大きく変えて行ってしまったのではないかという懸念事項である。

本論文を最初に書いた頃の20代の私と、20年後の現在の私とでは、様々な要素が大きく異なってしまっている。だからこそ、現在の私の価値観のみを優先して20年前に書いた内容を大きく変質させてしまうことは、20年前の自分自身の価値感を大きく損なってしまう可能性があるのである。

人は年齢を経ると共に成長していっているはずである。しかし、失ったものも明らかに存在する。現在の私の職業は、本論文を書いた時点での私の年齢とほぼ同じような年齢の学生たちと接し、彼ら一人一人の本質的部分を人生の経験者として見抜き、その価値をさらに高めることのできる職業である。だからこそ、甘さの見える本論文の全文をそのまま残し、注釈という形で内容をさらに深めていくことにする。